ケニア、種を蒔く

アントニオ猪木酒場で

昨年の12月初旬に二本松での訓練が終わり、
ケニアに派遣されるまで1ヶ月ほど時間があった。
出国への準備期間などに当てるものだけど、
忙しい時間を遣り繰りして、人と会うのもその間の楽しみの一つである。
そこで訓練中語学で同じ班だったメンバーを中心に、
東京で集まろうという話になり、
新宿で12月中旬、
担当の先生を含めて飲みにいったのだが、
そこには相川さんもメンバーに含まれていた。
彼女、黒縁の眼鏡がなかなかチャーミングで、
素直な性格なのだろう、
色々な物事に興味があるように見える、好奇心旺盛そうな素敵な女性だ。

彼女と最初に知り合ったのは、
確か訓練中の所外活動でのバス移動中だったと思う。
所外活動というのは、近くの施設に行ってボランティアをしてきなさいという、
一種の異環境でどのような行動が取れるかという訓練活動なのだけれど、
そこに行くバスの座席が隣同士になったのだ。
お互い老人ホームに行くことになっていたので、
何をするのだろうという世間話をしていた。
帰りのバスでは、こちらは精神的にタフな現場に配属され、
身も心もグッタリしていたのだが、
彼女はまだまだ余裕そうにニコニコと喋っていたものだった。
また、彼女の勤めていた先がちょうど自分が住んでいた最寄り駅だったので、
その話で盛り上がったりもした。
「わたし、前ダイクマがあった近くに住んでてそこから毎日歩いて通っていたのよ」
とか、
「バーズに入っているあの店が美味しい」
など、訓練所では全国から人が集まるのだけれど、
地元の人しか分からないような共通な話ができて、
なんだか同郷の同志のように感じていた。

1次会の時間が終わりになった為、会は自然と2次会へ。
誰が行こうと言い出したのか忘れてしまったが、
「アントニオ猪木酒場」という店に行く。
店内に入った瞬間ゴングが鳴るという風変わりな趣向な酒場で、
アントニオ猪木をモチーフにしたなんとも味のある飲み屋だ。
相川さんも、ゴングが鳴る度にキャッキャッと喜んでいた。
クラス担当のカナダ人の先生ををからかいながら、
そこで、みんなで酔っ払いバカ話で盛り上がった。
師走のとある日、結局終電まで飲んでいた。
たいして実のある話はしていないのだけれど、
ふとしたきっかけで、あのアントニオ猪木酒場のことを思い返したりする。
普通の飲み会だったのだけれど、
こういう会の方が意外と心に残ったりするのは、
きっと心が温まるいい会だったからなのであろう。

先日、旅先中のワタムで友達からメールが来た。
相川さんが赴任先のナミビアで交通事故に遭われてお亡くなりになられた、と。
メールを見た瞬間、茫然自失となった。
かけていい言葉というものが全く見つからない。
心からご冥福をお祈りしたい、とだけ今は言っておく。



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by tanewomaku | 2011-08-27 06:57 | 日本