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ケニア、種を蒔く

メルティング・ポットの中で

先日、学校の近所で殺人事件が起こった。
土曜の夜、寝静まった頃、
強盗が家宅に侵入した際に喉を切られて死んだということだ。
翌朝、警察が来て実況見分を行っていた。

今住んでいる場所は学校の敷地内という事もあり、日中はそれほど怖くもないのだが、
これが暗くなると一変し、
どこからとも襲われるかもしれないという思いが付きまとい恐怖を感じる。
地元住民からも、皆が夜は危険だから出歩くな、とよく言われる。
この前、警察署に行って地元の警備担当の話を聞いたのだけれど、
この辺は平和だから何もないと言っていたが、
実際、犯罪はどこにでも起こることなのだ。
そして犯罪者も必死である。
この辺の土地は以前、コミュニティ内で犯罪を犯した者に対して公開リンチを行う風習があったのだが、
その残滓が今でも残っているらしく、
たまにそんなことが行われることがあるそうだ。
なので彼らも捕まったら最後、自分が逆に殺される可能性があるので、
犯罪が凶悪化することが多分にある。

エリウッドからその殺人事件の話を聞いたのだが、
ケニアは42の部族からなる多民族国家。
彼曰く、どうやら同じ民族同士だとあまり襲わない。
犯罪者が事を働くとしたら、違う部族の土地で襲撃をする。
犯罪と民族問題がこの辺で結び付くとは、なんとも嫌な感じなのだが、
これが多民族、メルティング・ポットが見せる負の部分なのだ。
でも、同じ多民族国家であるはずの隣国タンザニアでは、
それほど重大犯罪は起こらないらしい。
何故か?
これは国のできる過程で生じたらしく、
ケニアは国の成立から一貫して民主主義を採った為に、
民族主義が台頭してしまったらしいのだが、
タンザニアは当初アフリカ社会主義を標榜していた為、
民族より国を優先する施策を行ったから。
共同体の意識が民族と国とでは決定的に違う。
残念ながらケニアでは、同じ国民でも違う部族であれば敵にもなるわけで、
それが最悪の形に発展したのが、2007年の大統領選にまつわる暴動である。
その辺の話は、ポール・コリアーの著作「民主主義がアフリカ経済を殺す」が詳しいので、
ご興味がある方は一読してもらいたい。
現在のケニアは、表面上は穏やかな社会を形成しているが、そのマグマは今も地中深くで煮えたぎっている。
日常の世間話でも、民族、政治の類になると、ふと隠れているものがちらりと垣間見え、
こちらがちょっと落ち着かない気分にさせられたりするのだ。

民族の融和が大事だと言うのは簡単だけど、
そこに至るまでには、はたしてどのぐらいの年月が必要になるのだろうか。
世界にはそれを検証する例はいくらでも存在する。
そこから私達は真に何を学ぶべきか。
エリウッドの話を聞きながら、そんなことを考えていた。


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by tanewomaku | 2011-03-25 05:18 | ケニア